この恋を運命にするために
運ばれてきた料理はどれもランチとは思えない、贅沢な品ばかり。
あまりの美味しさに声も出せずにいると、信士さんが訊ねる。
「お口に合いませんか?」
「いえ! あまりの美味しさにびっくりしてしまって。こんなにすごいお店が行きつけなんですね」
「シェフと父は昔ながらの仲でね。家族でお世話になっているんですよ」
「そうなのですか」
やっぱり信士さんのご実家ってすごいんだなぁ。
ミシュラン一つ星が行きつけなんて、相当のセレブよね。
「信士くんが子どもの頃から知ってるけど、まさか恋人を連れて来てくれるようになるなんてなぁ」
シェフは私の方を見てニヤニヤしている。
「いえ、まだ恋人じゃないです」
「そうなのかい? でもまだってことは?」
「恋人志望です」
「そうなのか! 信士くんもスミに置けないなぁ!」
シェフは豪快に笑った後、「ごゆっくり」なんて言って出て行ってしまった。
信士さんは明らかにげんなりした表情をしていた。
「……なんであんなこと言うんですか」
「本当のことです」
「この際だから聞きますけど、君は私の家のことはご存知ですか?」
「はい、父に少し聞いた程度ですけど、お父様は警察庁の刑事局長さんだとか」
「ええ、祖父は警察庁長官で親族含め皆警察関係者です。満咲の名を聞けば、恐れて関わりたくないと思う者がほとんどなんです」