この恋を運命にするために
五輪目
「菜花ちゃん、もう帰っちゃうなんて寂しい」
「今回は本当に少しだけの帰国だったから」
彼女は義理の姉の菜花ちゃん。
兄さんと結婚する前から仲良くさせてもらっている。
優しくてかわいくて兄さんにはもったいないお嫁さんだ。
「今夜遅くの便で帰るのよね?」
「うん、紅真くんの仕事が終わったら合流して早めに空港に行って向こうでゆっくりしようと思ってるの」
「空港で?」
「意外と温泉とかあって楽しめるんだよ」
「へー」
兄さんは日中仕事なので、私は有り難く菜花ちゃんの時間をもらって一緒にランチした。
兄さんに邪魔されずに菜花ちゃんを独り占めするのはいい気分。
しかも今夜は信士くんと二回目のデートだし……!
「蘭ちゃん、例の刑事さんとはどうなの?」
「なんか、いい感じかもしれないの!」
信士くんの話になると顔がとろけてしまう。
「今夜デートなの」
「だからいつもよりかわいいんだ」
今夜は新宿のホテルに入っているフレンチレストランでディナーだ。
ドレスコードはないと言われたけど、信士くんが選んだところだからそれなりのところだと思う。
「素敵なお着物だね」
「ありがとう」
私は白い胡蝶蘭が大きくあしらわれた着物を着ていた。
華道家という仕事柄、普段から着物を着る機会が多く着付けは今は亡き祖母に教えてもらった。