第零作★血文字の告白★
第二部 ― 疑心暗鬼
血文字の「しらべるな」を見つけた日から、私は夜眠れなくなった。夢の中で、あの赤黒い筆跡が何度も目の前に浮かび上がる。
翌日、神谷家の失踪当時を知る人物に会おうと、村の元駐在所に勤めていた男を訪ねた。
だが、彼は取材を始めてすぐに表情を曇らせた。
「……神谷家の件は、もう忘れろ」
「なぜです? 二十年前の出来事ですよ」
「忘れろと言っている!」
怒鳴り声に押され、私はそれ以上聞けなかった。だが、その帰り道で背後に視線を感じた。振り返ると、電柱の影に人影が一瞬見えた気がした。
数日後。役場の資料を再び閲覧しようとしたところ、肝心の失踪届や当時の調査記録が一部抜き取られていた。残っていたのは劣化した新聞の切り抜きだけで、そこにはこう記されていた。
――「神谷家三人、消息不明。家屋内に血痕。事件性は否定されず」
やはり、ただの家出ではない。
しかし、なぜ記録が消されているのか。誰が隠そうとしているのか。
夜、宿泊していた民宿に戻ると、玄関に小さな封筒が差し込まれていた。中には、白い紙切れ一枚。
そこに書かれていたのは、またしても血の滲んだ文字だった。
「つぎは おまえだ」
手が震えた。
まるで、私の行動をすべて監視しているかのようだ。
この村の誰もが、味方ではなく敵に見えてくる。
その夜、窓の外から覗き込む影を見た。
追いかけたが、足音はすぐ闇に消えた。
ただ、地面に泥で描かれた指文字が残されていた。
「ゆるして」
それは、廃屋で見たものと同じ筆跡だった。
血文字の「しらべるな」を見つけた日から、私は夜眠れなくなった。夢の中で、あの赤黒い筆跡が何度も目の前に浮かび上がる。
翌日、神谷家の失踪当時を知る人物に会おうと、村の元駐在所に勤めていた男を訪ねた。
だが、彼は取材を始めてすぐに表情を曇らせた。
「……神谷家の件は、もう忘れろ」
「なぜです? 二十年前の出来事ですよ」
「忘れろと言っている!」
怒鳴り声に押され、私はそれ以上聞けなかった。だが、その帰り道で背後に視線を感じた。振り返ると、電柱の影に人影が一瞬見えた気がした。
数日後。役場の資料を再び閲覧しようとしたところ、肝心の失踪届や当時の調査記録が一部抜き取られていた。残っていたのは劣化した新聞の切り抜きだけで、そこにはこう記されていた。
――「神谷家三人、消息不明。家屋内に血痕。事件性は否定されず」
やはり、ただの家出ではない。
しかし、なぜ記録が消されているのか。誰が隠そうとしているのか。
夜、宿泊していた民宿に戻ると、玄関に小さな封筒が差し込まれていた。中には、白い紙切れ一枚。
そこに書かれていたのは、またしても血の滲んだ文字だった。
「つぎは おまえだ」
手が震えた。
まるで、私の行動をすべて監視しているかのようだ。
この村の誰もが、味方ではなく敵に見えてくる。
その夜、窓の外から覗き込む影を見た。
追いかけたが、足音はすぐ闇に消えた。
ただ、地面に泥で描かれた指文字が残されていた。
「ゆるして」
それは、廃屋で見たものと同じ筆跡だった。