皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「公爵閣下……ありがとうございます。」

セドは私の肩に手を置いたまま、深々と頭を下げた。

「必ず、エリナを俺の妃にしてみせます。」

その瞳はまっすぐで、決意に満ちている。

「今から書類をまとめ、二、三日中に国王の決裁をとりつけます。」

これまで幾度となく政務を共に見てきたけれど、これほど力強い声を聞いたのは初めてだった。

「さすがだ、殿下。」

ルーファス公爵閣下は口元に笑みを浮かべ、目を細める。

「私も全力で動こう。侯爵令嬢として迎える以上、教育も準備も一切手を抜かん。すぐに教師を手配する。」

まるで戦に挑む将のように、二人はすでに心を一つにしていた。

その光景を見て、胸が熱くなる。

――本当に、私が皇太子妃になれる日が来るのかもしれない。

鼓動が高鳴り、足元が震えた。けれど同時に、不思議な勇気も湧き上がっていた。
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