皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
驚いたのは、国王陛下もだった。

「……エリナを、公爵家の令嬢に?」

玉座から低い声が響くと、私は思わず身を縮め、床に目を落とした。顔を上げる勇気などなかった。

隣に立つルーファス公爵閣下が、一歩前に進み出る。

「はい。私には女子がいません。ですが、エリナは聡明で勤勉、礼儀をわきまえた女性です。公爵令嬢として相応しい資質を備えていると考えます。」

その声は揺るぎなく、堂々としていた。

私は緊張で胸を締めつけられながらも、公爵閣下の言葉に背を押される思いだった。

「……セドリックの為か。」

国王の鋭い眼差しに、心臓が跳ねる。

どうやら、私が夜伽の相手であることまでも、陛下は知っているらしい。

血が引く思いだった。

けれど、セドは怯まなかった。

「はい。父上。彼女は私の妃に相応しいと信じます。」

重い沈黙の後――国王は深く息を吐き、玉座にもたれかかった。

「……よかろう。」

その一言で、空気が一変した。

国王の決裁が降りたのだ。

胸の奥から熱いものが込み上げ、視界が滲む。

ついに、私は本当に“公爵令嬢”になる道を与えられたのだ。
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