皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました

第8章 妃になる覚悟

そして私は、ついにルーファス公爵の屋敷に足を踏み入れた。

「今日から……新しい家。」

声に出してみても、まだ実感は湧かない。

一時的だとしても、セドから離れて暮らすことになるなんて、考えたこともなかった。胸の奥がひりつく。

広い玄関ホールには、公爵閣下と夫人が待っていてくれた。

「よく来たね、エリナ。」

公爵閣下はいつもの穏やかな笑みを浮かべ、私を迎え入れてくださる。

「よろしくね。お母さんだと思っていいのよ。」

夫人は柔らかく手を握ってくださった。その温もりに、ほっと息が漏れる。

「はい。」

優しい人でよかった――胸の奥がじんわりと温まる。

けれど、次に飛び出した言葉に思わず固まった。

「ところで……皇太子殿下の恋人って、本当?」

「えっ?」

顔が一気に熱くなる。

新しい“お母さん”は、どうやらとてもざっくばらんな人らしい。
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