皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
疲れが溜まっていたのだろう。

図書室の机に突っ伏したまま、いつの間にか意識が遠のいていた。

『エリナ……』

どこか懐かしい声が、耳の奥に響く。

『可哀想に。こんなに疲れ果てて……』

ふわりと温かい腕に抱きしめられる。

胸に広がるのは、私が一番安心できる匂い。

『俺がいる時は、無理しないで。』

「……はい。」

夢の中の私が答えていた。ああ、幸せ。

セドに抱きしめられるなんて。思わずふふっと笑みがこぼれる。

『エリナ。なんだか積極的だな。』

え……?

ゆっくりと目を開けると――目の前に、微笑むセドがいた。

「殿下……⁉」

心臓が大きく跳ね上がり、私は慌てて飛び起きた。

けれどセドの腕はまだ私をしっかり抱いていて、逃げ場はなかった。
< 110 / 151 >

この作品をシェア

pagetop