皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
オーケストラが荘厳な旋律を奏で始めた。

私は深呼吸をひとつしてから、セドの腕を取る。

「……俺と踊ってください。」

差し出された手に導かれるまま、私は小さく頷いた。

「はい。」

二人はゆっくりと歩み出す。

広間の中央、煌めくシャンデリアの下で足を止めると、すべての視線が私たちに注がれた。

「……あれは、侍女だったエリナ⁉」

「いつの間に令嬢に……!」

ざわめきが波のように広がっていく。

けれど、その声も光も、今はただ遠くに感じられた。

私の視界にあるのは、目の前のセドだけ。

彼の瞳と私の瞳が交わり、言葉よりも強く心を繋ぐ。

音楽が二人を包み、優雅なステップが始まった。

――この瞬間だけは、誰のものでもなく、セドと私の世界だった。
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