皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
優雅な旋律に合わせて、私とセドのステップが舞う。

彼の手に導かれ、裾がふわりと広がり、会場の視線が一層集まっていくのが分かる。

けれど、その熱い視線さえ、セドと見つめ合う瞬間には霞んでしまった。

「エリナ。」

低く甘い声が耳元に届く。

「……殿下?」

彼は微笑を浮かべながら、私を引き寄せるようにステップを踏み、ささやいた。

「今夜、誰よりも――おまえが一番美しい。」

鼓動が一気に高鳴り、頬が熱を帯びる。

会場にいる無数の人々の中で、その言葉は私だけに向けられたもの。

「殿下……」

震える声で呼ぶと、彼は私の手をさらに強く握った。

「俺の隣にいるのは、誰でもない。エリナ、おまえだ。」

目の奥に宿る真剣な光に、胸がいっぱいになり、涙が溢れそうになった。

――この人に選ばれているのだと、改めて実感した瞬間だった。
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