皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
舞踏が終わり、喝采がまだ広間に残っている中で、セドが私の手を取った。

「エリナ。少し、外の空気を吸おう。」

人々の視線を避けるように、彼は私を庭園へと導いた。

夜風が頬を撫で、星々がきらめく。

月明かりに照らされた薔薇のアーチを抜けると、舞踏会の喧噪は遠のき、静寂だけが広がった。

「はぁ……冷たい風が心地いいですね。」

私が小さく息を吐くと、セドは横顔を見てふっと笑う。

「エリナ。舞踏会の君は、本当に見事だった。皆が釘付けだったな。」

「そ、そんな……殿下のおかげです。」

頬が熱くなり、俯きかけると、彼の指先が顎をそっと持ち上げた。

「違う。俺はただ誇らしかった。あの場にいた誰もが、おまえを皇太子妃にふさわしいと思ったはずだ。」

真剣な眼差しに射抜かれ、胸が高鳴る。

――今、この静かな庭園で、何が起こるのか。

セドの手はまだ私の手を包み込んだまま、離れる気配はなかった。
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