皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
玉座の間に、重々しい沈黙が落ちた。

やがて国王は深いため息をつき、威厳ある声で言い放った。

「たとえ公爵令嬢になったとしても……皇太子妃の座は容易に得られるものではないぞ。」

その言葉は、広間にいた誰もが納得する現実だった。

重責、陰謀、そして国を背負う立場――。

一介の侍女だった私には、到底背負えないと思われているのだ。

だが、私は一歩前に出て、真っ直ぐに国王を見据えた。

「……それでも、私は殿下のお傍におります。」

静かながら、迷いのない声が響いた。

「セドリック皇太子殿下の隣に立つことが、私の望みであり、生涯をかけて果たすべきことだからです。」

セドがそっと私の手を握り、微笑むのが伝わる。

その温もりが、恐れをすべて吹き飛ばしてくれた。
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