皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「皇太子殿下の心を想うと……涙が出て来るのです。」

声を震わせながらそう告げると、セドはふっと口元を緩めた。

「あんな美しい姫が、俺を愛してくれるわけがないよ。」

その自嘲めいた言葉に、胸が痛む。

私は慌てて涙を拭い、必死に首を振った。

「そんなことはありません!」

私の叫びに、セドの瞳がわずかに揺れる。

次の瞬間、彼は静かに身を屈め、私の瞳にそっと口づけた。

「優しいね、エリナは。」

頬が熱くなり、胸が締めつけられる。震える声で答えるしかなかった。

「……お優しいのは、皇太子殿下の方です。」

侍女であることも、分不相応な立場であることも、その時はすべて忘れていた。

私はただ、彼を抱きしめた。

胸に顔を埋め、声を殺して泣いた。

セドの大きな手が、背をゆっくりと撫でてくれる。

その温もりに、孤独な殿下を少しでも癒やせているのなら――そう願いながら、私は彼の胸の中で夜を泣き明かした。
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