皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
最後の一歩を踏み出し、音楽が高らかに締めくくられた。

私とセドは優雅に一礼する。

その瞬間――会場が大きな喝采に包まれた。

拍手の波が押し寄せ、口々に賛辞が飛び交う。

「見事だ!」

「なんて美しい舞だ!」

「皇太子妃にふさわしい!」

頬が熱くなり、胸の奥がじんわりと満たされる。

そんな中――杖を突いて立ち上がった国王の声が、広間を静めた。

「……よくやった。」

低く響くその声に、私は思わず顔を上げた。

「父上……」とセドが小さく呟く。

国王はゆっくりと玉座から歩み寄り、私をじっと見据えた。

「エリナ。おまえの所作、立ち振る舞い……確かに皇太子妃に相応しいものだった。」

会場に再びどよめきが走る。

王が直接“認める”言葉を下すなど、滅多にないことだったからだ。

「殿下のお傍に立つ覚悟、その目に宿っていた。……余はそれを見届けた。」
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