皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
机の上には山のように積まれた書類。私はつい心配になって口を開いた。

「殿下……そんなにお仕事を詰め込んで、大丈夫ですか? 少し休まれたら……」

セドはペンを置き、ふっと目を細める。

「休むか。」

「えっ……?」

てっきり「大丈夫だ」と言われると思っていた私は、言葉を失った。

次の瞬間、椅子から立ち上がったセドが私の腕を取り、ぐっと抱き寄せる。

「殿下……!」

「こうして、おまえに触れていられるなら……休んでもいいだろう?」

囁かれ、唇を塞がれる。柔らかく、けれど抗えない強さを秘めたキス。

「……ん……」

胸が高鳴り、思わず目を閉じた。

山のような書類よりも、今は私の存在が必要だと言われた気がして、涙が出そうになるほど嬉しかった。
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