皇太子に溺愛されすぎて、侍女から公爵令嬢になりました
「そこで何をしている!」

重々しい声が廊下に響き渡った。

振り向けば、ルーファス公爵閣下が立っていた。

「これは……どういうことですか。」

その鋭い眼差しに、私の心臓は凍りつく。

沈黙が落ちる中、口を開いたのはアルキメデスだった。

「これ以上、エリナに夜伽をさせるのは……酷なことです。」

真剣な声が廊下に響く。

公爵は険しい顔のまま、私とセドを交互に見つめた。

「妃になれない以上、想いを重ねても無意味だ。」

鋭い言葉に、私は息を呑む。

けれどその刹那、セドが一歩踏み出し、アルキメデスに向き直った。

「だから、自分がエリナを奪うのか。」

問いかけに、アルキメデスは唇を結び、黙り込む。

その沈黙が答えのようで、胸が痛んだ。

「俺は……」

アルキメデスはようやく声を絞り出す。

「俺はエリナが好きだ。不幸にはしない。」

その言葉は切実で、真っ直ぐで。

私は胸を締めつけられ、何も言えずに立ち尽くした。
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