残念令嬢、今世は魔法師になる
 父は訝しげに眉をひそめ、私を見た。

「グランヴェール公爵家も懇意にしているお医者様です」

 ごめんね、ノエイン。あなたの家を利用させてもらうわ。

「ふむ、そうか。それほど腕のいい医者なら信頼できるだろう。間違いなく安価で診てくれるのだろうね?」
「はい。大切な私の友人の家族ですから、両親も快く動いてくださるでしょう。困ったときはお互い様ですもの」
「好意を受け入れよう。カイラに医者を呼んでくれ」
「すぐに手配しますね」

 父は満足げに笑みを浮かべながら、さっさと厨房をあとにした。
 リベラは涙を流しながら、私に抱きついてきた。

「ありがとう、ミレア。このお礼をどうやってお返しすればいいかしら?」
「カイラもあなたも私にとって大切な人だもの」
「ミレア、一生友だちでいさせてね」
「もちろん。私もだよ」
「うん」

 私は泣きじゃくるリベラをそっと抱きしめた。

 とにかくこれで、カイラの未来を少しでも変えることができる。
 少なくとも、あんな悲惨な死を迎えることからは遠ざけられたはずだ。

 今世ではカイラもリベラも、私が必ず守ってみせる。

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