残念令嬢、今世は魔法師になる
「リベラ! リベラ、しっかりして!」

 リベラは意識を失ってぐったりしている。
 頬を撫でると驚くほど冷たく、口もとに指を当てると呼吸をしていない。

「そんな! いやだよ、リベラ。死なないで!」

 涙があふれて頬をつたう。その雫が私の左腕に落ちたとき、ブレスレットが金色に輝いた。
 その光は私とリベラを包み込んで、不思議な温かさに満ちていく。
 やがてリベラの目がかすかに開いて、唇がわずかに震えた。

「……ミ、レア」
「よ、よかった。リベラ、ごめんね」

 私は泣きながらリベラをぎゅっと抱きしめる。
 その背後から、ふたたび執事の怒声が響いた。

「お前は邪魔ばかりする。真っ先にお前のほうを始末すべきだった」

 言葉に容赦はない。
 先ほどまで殺すつもりはなかったのだろうが、今や態度が変わっていた。
 けれど、私の胸中は彼に対する恐怖よりも、憎悪で満ちていた。

 リベラをこんな目に遭わせるなんて。
 絶対に許せない――!

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