残念令嬢、今世は魔法師になる
 ふっと嘲笑じみた笑いがもれた。
 まともに食事もとれず、破れた古いドレスを身にまとい、世話をする者さえいないというのに、まだ自分が貴族だというプライドがあるのか。

 かすれるようなため息をこぼす。
 目を閉じると涙がじわりとあふれ、頬をつたって落ちた。


 最後くらい夢を見てもいいだろうか。

 そう。たとえば、私は明るくて笑顔の可愛い女の子。
 温かい両親に育てられ、美味しい料理でお腹を満たして、可愛らしいドレスを着て、友だちに囲まれて、毎日笑顔で暮らしているの。

 恋もしてみたいわ。


 そんな絶対に叶わない夢を抱きながら、私は深く、深く、眠りについた。
 こうして、カイラとしての私の人生は、54歳で幕を下ろしたのだった。

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