残念令嬢、今世は魔法師になる
「見て。彼は光魔法を使うの。魔塔の魔法師しか使えないのよ」

 リベラに言われて、私は息を呑んで彼の舞台を見つめた。
 ノエインが片手を振りあげただけで周囲が光に包まれて、そこに虹色に輝く獣が現れた。その姿はだんだん大きくなりドラゴンとなって舞いあがり、私たちの頭上をすばやく飛んでいった。
 光と風が通り抜けて、私は思わず目を閉じた。
 次に目を開けたら、すべてが跡形もなく消えていた。

 大きな拍手がわいた。
 ノエインはしばらく真顔で立っていたけれど、途中で何も言わずに舞台から降りていった。
 リベラは拍手をしながら「今回もすごい魔力だったわ」と興奮冷めやらぬ状態で声を上げた。
 私は放心状態で、拍手をするのも忘れて、ノエインがいなくなった舞台をじっと見つめていた。

「彼は学校で学ぶことはすべてマスターしていて、魔塔の仕事を手伝っているそうよ。卒業後は正式に魔塔所属の魔法師になって、将来は宮廷魔法師の道が約束されているらしいの」

 多くの人の止まない拍手と、リベラの声が、私には遠くに聞こえている。

「フェデル王太子殿下の信頼も厚くて、将来は殿下直属の魔法師になるのでしょうね」

 私は拍手をしようとした。けれどできなくて、手を合わせたまま震えた。

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