残念令嬢、今世は魔法師になる
「わあ、綺麗」
「ミレアもできるわよ」
「本当?」
「やってみて。水魔法を起こすには空気中の水を集めるの。あまり力を入れずにそっとね」
「うん」

 リベラと同じように人差し指をくるりと回す。だけど何も起こらなくて、思わず力んで何度も指をくるくるさせた。
 すると雫みたいな水がわずかばかり指先に集まって、それから霧みたいに散った。

「失敗しちゃった」
「大丈夫。何度も練習すればできるようになるわ」
「うん」

 私はリベラのとなりで何度も水魔法を試してみた。
 集中して指をくるりと回す。だけど、私の水は形にならずにすぐに消えてしまう。
 それでもあきらめずに繰り返すうちに、ようやく小さな水の粒がふわりと浮かびあがった。
 しゃぼん玉にはほど遠いけれど、それでも3回に1回くらいは、水魔法が成功するようになっていた。

「すごいわ、ミレア。上達してるわよ」

 リベラが目を輝かせて褒めてくれる。
 私は少し照れながら笑った。
 テストまであまり時間はないけれど、できるところまでやってみようと思った。
 
 それにしても、初めて魔法を使ったあの日。
 私はなぜあれほどの暴風を巻き起こす風魔法が使えたのか、いまだにわからない。

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