「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「きっと、私たちもいつか思うんでしょうね。
 明治というこの時代が終わったあとで――。

 明治は遠くなったなあって」

 そのあと、二人の事情を知った中山翁が仲人を買って出てくれたわけだが。

 珠子の父は相変わらず、破産と成功を繰り返しているので、岩崎家としては、微妙な感じの嫁なのだろうが。

 中山翁が間に入ってくれたおかげで、なんとかなった。

「珠子さん、お待たせーっ」

 相変わらず、派手で華やかな装いの善子がやってきた。

 子どもを背負わされているのは、山内だ。

 だが、今は使用人ではない。

 山内は、縁談のまとまらぬ善子の夫となったのだ。

 当時、善子の父は苦悩していた。

「ほんとうに善子の我儘には手を焼く。
 一体、誰なら結婚するというのだ。

 ……そうだ、山内っ。
 お前ならいつも善子の側にいるから大丈夫じゃないか?」

「は?」
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