「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
「お前、出自はそう悪くなかったな。
 よし、何処かうちの親戚にでも養子に入れ。

 それから善子と結婚するんだ」

「いや、ちょっと待ってくださいっ」

「それでいいな? 善子」
「いいわけないですよねっ、お嬢様っ」

 だが、善子はちょっと考え、
「いや、いいかも」
と言った。

「とりあえず、結婚しとけば、うるさく言われないわけだし。

 山内なら、見栄えも悪くないし。
 どのみち、いつも側にいるし。
 今となにも変わらないものね」

「変わりますよっ」
と叫んだ山内だったが、逃げようもなく、善子と結婚させられてしまった。

 だがまあ、今ではたくさんの子宝にも恵まれ、せっせと子どもたちの世話を焼いているので、幸せでないこともないのだろう。

「さあっ、博覧会、遊び倒すわよっ」

 善子の子どもたちが来たことに気づき、千代子たちが走ってくる。

 騒がしい一団の後を珠子と晃太郎はついていった。

 ふと微笑み、晃太郎が言う。

「……明治でも大正でも、その先の時代でも。
 お前とずっと、こうしていられたらいいな」

 はい、と珠子は微笑み返した。
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