「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」
珠子のところに行くために早起きしたが、珈琲のせいか、あまり眠くないな。
晃太郎は、いつもより遅めに出勤しようとしていたが、気がつけば、横を高平が歩いている。
「おはよう」
「……俺を待ち構えてるのか、お前は」
「今、お前、普段と違う道から、この通りに入ったな」
だから、お前は俺を見張ってるのか……。
「珠子のところから来たんだ」
なにっ? と高平は血相を変え、身を乗り出す。
胸ぐらをつかまれそうになったが、
「珠子のところに行くために、早起きして行ってきたんだ」
と言うと、
「……いや、なんで朝行くんだよ」
夜行けよ、と言われる。
どうしたいんだ、お前は、と思ったが。
なにっ? は兄としての叫びで、
なんで朝行くんだ、は友人としての言葉だろう。