望みゼロな憧れ騎士団長様に「今夜は帰りたくない」と、良くわからない流れで言ってしまった口下手令嬢に溺愛ブーストがかかってから
 そうなのだ。先ほどハビエル様は安心して颯爽と去って行ってしまったけれど、後々『こんな女性だと思わなかった。話が違う』と、邸を追い出されてしまったら……? 想像しただけで、立ち直れないんだけど。

「シャーロット。些細なことを気にするなよ。ハビエルは何があってもお前を逃さないと言っていたんだから、その程度は目を瞑るだろう」

 エリアスは呆れたように言って応接室を出ていき、そこには私一人だけが残された。

「それって、その程度……のことなのかしら?」

 ぽつりとつぶやいた私の心にはこれまで声を掛けてくれたものの、まともに話せないとなるや、態度を硬化させてしまった男性たちの顔がいくつも浮かんだ。

 せっかく声を掛けてくれたのに、なんだ期待外れだと失望したあの表情……もしかしたら、ハビエル様もそうなってしまうかも知れない……。

 そうなったら、なんだかもう……落ち込んでしまって、立ち直れない気がする……けれど、長い間悩み続けたことが、すぐに解決するなんてありえないし。

 どうしよう……。

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