忌み子の私に白馬の王子様は現れませんでしたが、代わりに無法者は攫いにきました。
25話 乱戦
「はぁ…………無茶苦茶やるわね」
地上に戻ってから私は嘆息していた。今は「赤竜の覇団」しかいないから外部の者に話を聞かれる心配はない。
亜人同盟結成の会合は無事?に終わり、晴れてヴィシャスはボスの座につくことになった。
地下の洞窟空間で繰り広げられた緊張の記憶が頭に浮かぶ。ゴルザの巨体を文字通り一捻りして壁に叩きつけられた衝撃。会場はヴィシャスに皆が圧倒されていた。
「そうですね。私は正直、自分の組織で手一杯なのであなたが同盟のまとめ役を引き受けることに異論はありませんね。ただし、あまり無理のある命令に従うつもりはありませんが」
乱暴者のゴルザさんよりマトモそうではありますし……、そうボソッと付け加え『翠牙』の首領クードが賛意を示した。
「結局の所、革命に戦闘は必至だしねー。強い奴がトップでいんじゃない?」
『紫黒防人』の首領シーラ が何を考えているかわからない笑みを浮かべたまま反対するつもりはない、と伝える。
有力な大組織が賛同したことで他の組織の幹部達も、次々と賛成する。ヴィシャスが亜人同盟のトップに立った瞬間だった。
私はいつ乱闘騒ぎが起こるか気が気じゃなかったので話がまとまったようで安堵した。……壁に激突してから倒れて動かないゴルザさんのことは色んな意味で少し心配だけど。
とにかく、ここに亜人同盟は結成された。
その後は具体的な調整――同盟間での役割分担、今後の動き、資源の配分を決めることとなった。
今は一時解散し、各組織の構成員に会合の結果について報告するべく森の中で情報共有をしている最中だった。
「カカッ!結果オーライってなぁ!上手くいったじゃねーか」
全て計画通りだとヴィシャスが笑う。だけど私にはどうにも出たとこ勝負で勢いで乗り切ったようにしか思えない。
「まーまー姐さん。アニキはこういう人ですから」
「私としても言いたい所はありますが……実際荒くれ者達を束ねるには実力を見せつけることは間違いではなかったと思いますよ。もっとも、やる前に一言相談はして欲しかったですがね」
オオカミ型獣人のガルフとエルフのナイゼルがそうヴィシャスをフォローする。
実際に一緒の現場にいた私は気が気ではなくどうなることかとハラハラしたのだ、少しは心配する者の身にもなって欲しい。
「悪りーって。そうむくれるなよな~」
「…………もう」
私の気持ちがわかって平謝りする彼をこれ以上責めるのも酷か。ここら辺で許してあげることにした。
「そう言えば…………ラビィルさんは?」
ここには主要メンバーに加え、赤竜覇団の一般構成員も揃っている。しかし、あのフワフワもこもこの兎さんである彼女の姿は見えなかった。
「ああ!何か、他組織の連中と話すことあるってさ」
「…………」
どうやら彼女は組織間の橋渡し役として動いているらしい。つくづく多才かつ忙しい人である。
「ハハハ、何話してんだろーなぁ?」
ヴィシャスは他人事みたいに言っているがボスである貴方の代わりに政治活動してるんでしょ、と思わなくもない。と言っても彼が行けば荒事になる可能性が高いので適材適所か………。
私が呆れていることにも気づかずヴィシャスはのんきに笑っていた。
「ん?」
「?……どうしたの?」
ヴィシャスが真剣な顔つきに代わって周囲の様子を窺っている。私もつられて森の中の様子を確かめた。何もな……いいえ、ガサガサと物音がする。木々のざわめきが不自然で、風が止んだような静けさ。葉の影が揺れ、土の匂いが濃く感じる。鳥のさえずりがなく、代わりに低く唸るような音が聞こえてきた。
「こいつぁ、穏やかじゃないですねぇ。殺気で漲ってまさぁ」
ガルフが鼻をすんすんと鳴らし、ナイフを取り出している。ナイゼルも無言で杖を取り出していた。
地上に戻ってから私は嘆息していた。今は「赤竜の覇団」しかいないから外部の者に話を聞かれる心配はない。
亜人同盟結成の会合は無事?に終わり、晴れてヴィシャスはボスの座につくことになった。
地下の洞窟空間で繰り広げられた緊張の記憶が頭に浮かぶ。ゴルザの巨体を文字通り一捻りして壁に叩きつけられた衝撃。会場はヴィシャスに皆が圧倒されていた。
「そうですね。私は正直、自分の組織で手一杯なのであなたが同盟のまとめ役を引き受けることに異論はありませんね。ただし、あまり無理のある命令に従うつもりはありませんが」
乱暴者のゴルザさんよりマトモそうではありますし……、そうボソッと付け加え『翠牙』の首領クードが賛意を示した。
「結局の所、革命に戦闘は必至だしねー。強い奴がトップでいんじゃない?」
『紫黒防人』の首領シーラ が何を考えているかわからない笑みを浮かべたまま反対するつもりはない、と伝える。
有力な大組織が賛同したことで他の組織の幹部達も、次々と賛成する。ヴィシャスが亜人同盟のトップに立った瞬間だった。
私はいつ乱闘騒ぎが起こるか気が気じゃなかったので話がまとまったようで安堵した。……壁に激突してから倒れて動かないゴルザさんのことは色んな意味で少し心配だけど。
とにかく、ここに亜人同盟は結成された。
その後は具体的な調整――同盟間での役割分担、今後の動き、資源の配分を決めることとなった。
今は一時解散し、各組織の構成員に会合の結果について報告するべく森の中で情報共有をしている最中だった。
「カカッ!結果オーライってなぁ!上手くいったじゃねーか」
全て計画通りだとヴィシャスが笑う。だけど私にはどうにも出たとこ勝負で勢いで乗り切ったようにしか思えない。
「まーまー姐さん。アニキはこういう人ですから」
「私としても言いたい所はありますが……実際荒くれ者達を束ねるには実力を見せつけることは間違いではなかったと思いますよ。もっとも、やる前に一言相談はして欲しかったですがね」
オオカミ型獣人のガルフとエルフのナイゼルがそうヴィシャスをフォローする。
実際に一緒の現場にいた私は気が気ではなくどうなることかとハラハラしたのだ、少しは心配する者の身にもなって欲しい。
「悪りーって。そうむくれるなよな~」
「…………もう」
私の気持ちがわかって平謝りする彼をこれ以上責めるのも酷か。ここら辺で許してあげることにした。
「そう言えば…………ラビィルさんは?」
ここには主要メンバーに加え、赤竜覇団の一般構成員も揃っている。しかし、あのフワフワもこもこの兎さんである彼女の姿は見えなかった。
「ああ!何か、他組織の連中と話すことあるってさ」
「…………」
どうやら彼女は組織間の橋渡し役として動いているらしい。つくづく多才かつ忙しい人である。
「ハハハ、何話してんだろーなぁ?」
ヴィシャスは他人事みたいに言っているがボスである貴方の代わりに政治活動してるんでしょ、と思わなくもない。と言っても彼が行けば荒事になる可能性が高いので適材適所か………。
私が呆れていることにも気づかずヴィシャスはのんきに笑っていた。
「ん?」
「?……どうしたの?」
ヴィシャスが真剣な顔つきに代わって周囲の様子を窺っている。私もつられて森の中の様子を確かめた。何もな……いいえ、ガサガサと物音がする。木々のざわめきが不自然で、風が止んだような静けさ。葉の影が揺れ、土の匂いが濃く感じる。鳥のさえずりがなく、代わりに低く唸るような音が聞こえてきた。
「こいつぁ、穏やかじゃないですねぇ。殺気で漲ってまさぁ」
ガルフが鼻をすんすんと鳴らし、ナイフを取り出している。ナイゼルも無言で杖を取り出していた。