囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される
…・…・・…・

「以上が報告になります。明日は焼けてしまった屋敷跡地に入り、痕跡を探る予定ですが、期待はあまりできそうにありません」

 別室でカイルにオスカー・クライトンについての報告を受けていた。

「ああ。それと拘束しているマーガレット・オスカーが何やら変なことを言っていて」

 アイリスの力のことか。

「アイリス様のことだと思うのですが、あの女にはとんでもない秘密があると。私を減刑にするのであれば、その内容を話すと言っているんですか」

 やはりそうか。
 アイリスの力のことを皇帝へ伝えることで、極刑を免れようとしているな。

「わかった。俺が直接話を聞こう。あとカイル、調べてほしいことがある。アイリス・ブランドンの出生と、最近まで住んでいた家について調べてくれ」

「はい」

 彼女の治癒力は本物だ。
 あの力はどうやって?
 自分では幼少の頃、気づいたら発現していたと言っていた。
 遺伝か何か、出生を調べれば何かわかるかもしれない。
 皇帝へアイリスの力について報告するのもその後だ。

…・…・・…・




「アイリス様。お食事の内容はいかがでしょうか?」

 今日から私直属でお世話をしてくれる、メイドのエリスが食事を運んでくれた。

「こんなに豪華なもの、食べていいのかしら」

 テーブルいっぱいに並べられた料理に戸惑う。

「はい。カートレット様のご命令ですから」

 起床後、私は上流貴族のような扱いを受けている。
 身なりについても整えられ、何一つ困ることがないような手厚い配慮を受けていた。
 体調も全回復とまではいかないが、傷は癒えてきている。
 自分の治癒力を自分へ使えばいいことだけれど、母との約束はこれからも守っていきたい。

 朝食後、自室で窓の外を見ながら、思考が働かず、ただ時間が流れるままに過ごしていた時だった。

「アイリス様。カートレット様がお呼びです」

「カートレット様が?」

 屋敷を案内してくれるのだろうか。
 エリスに連れられ、カートレット様の部屋へ向かう。
 ノックし、部屋へ入ると、昨日と同じように隊服に身を包んだカートレット様が座っていた。

「アイリス。体調はどうだ?」

「おかげさまで元気になりました。ありがとうございます」

 席を外してくれとメイドのエリスにカートレット様が伝えると室内は二人きりになった。
 彼が私に近寄り、ジッと顔を覗き込んだ。

「まだ全回復とまでにはいかないな。無理をするなよ」

 嘘をついたつもりはなかったけれど、彼の言葉通りだ。

「大丈夫そうなら、約束通り屋敷を案内するが」

「ぜひお願いします。体調は大丈夫です」

 我儘かもしれないけれど、一人でいたくない。
 一人でいるといろいろなことを考えてしまうから。
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