囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される
「わかった。では行こうか」

 お屋敷の中を案内してもらい、そして外に出て、騎士団の訓練場も見せてもらった。広い敷地、かなりの面積だ。
 一般的に騎士は下級貴族と言われてはいるが、カートレット様は違う。
 皇帝、皇族直属の騎士団長に認められるはずだけのことはある。

「俺の敷地は、結界が張ってある。魔力を感じたり、侵入者がいればすぐ俺が察知する。だから安心して生活をしてほしい」

 彼の部屋に戻り、今後について話をしようと言われた。

「はい。カートレット様、私に何かできることはないでしょうか?お役に立てることをしたいんです。私の力を使えば、傷ついた騎士たちを治すこともできます」

 やみくもに力を使いたくはない。けれど、私にはそれしか役に立てる方法が考えられなかった。

「そのことだが。力のことは俺に任せてほしい。アイリスからは誰にもまだ話すな。時が来たら皆に知られてしまうかもしれないが、まだその時ではない」

 聖女が現れたなんて言ったら、大騒ぎになるに決まっている。
 順番に事を運ばなくては混乱も起こるだろう。

「わかりました。では、しばらくお屋敷のメイドとして働かせてください。少しでもお役に立ちたい。雑用でも何でもできることはしますから」

「それは……」

 私の表情を見て、カートレット様は「わかった」と返事をし「無理はするなよ」私がメイドとして働くことを許してくれた。

「まだ体力が戻っていないんだ。俺が良いと言うまでは静養しろよ」

「はい」

 返事をするとフッと口角をあげてくれた。
 
 それから私はカートレット様からの許可を得て、メイドとして働くことになった。
 私のお世話をしてくれた歳も近いエリスが教育係になった。

「アイリス、よろしくね。何かわからないことがあったらすぐ相談して」

 彼女は私に仕えていた時とは違い、普通に話しかけてくれた。笑顔を向けてくれ、はじめての友達ができた気がして、とても嬉しい。
 
 まだ先のことはわからないけれど、一生懸命働くんだ。
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