囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される
隠された力
「アイリス、今日は早く帰ってきてね?なんだか嫌な予感がするの」
その日はお世話になっている牧師様に教会で飾ってもらうお花を近くの花畑へ摘みに行こうとしていた。
母は胸を抑えながら、どことなく不安そうに忠告してきたのを覚えている。
「ええ。わかったわ。早めに帰るから」
私と母は二人暮らしの至って普通の平民だった。
父はいない、私が生まれる前に病気で亡くなったと母から聞かされていた。
裕福な暮らしではなかった。
学校も出ていない私は、働く場所もなく、街に出て市場を手伝ったり、知り合いから仕事をもらったり、その日暮らしをしていた。
母は身体が弱い。
ここ数年は頭痛や動悸に悩まされているみたいだったが、原因もわからず、ただ安静にしているしかなかった。
母のことは心配だけれど、調子の良い日はご飯を作ってくれたり、私にいろんな知識を教えてくれるから。
社会に出ても特に不自由することなく、なんとか働けていた。
早めに花を摘み、自宅へ帰ろうと急いでいた時だった。
なんだろう、あの集団。騎士さま?
鎧を纏った騎士が家の周りを取り囲んでいた。
どうして?私たちは何も悪いことなどしていないのに。
もしかしてお母様に何かあった?
息を切らしながら走っていくと「止まれ」とある騎士に声をかけられた。
「あの、私の家でなにかあったんですか?母は病気で家からあまり出られないんです!悪い人にでも……」
その場を通してほしいとすがりつく私に
「お前があの女の子どもか?」
声をかけてきた人物がいた。
だれ?私は知らない。
お母様の知り合い?
身なりを見ると、上流階級の貴族であることはわかる。
家紋は……。この辺りでは見たことがない気がするけれど。
「母を知っているんですか!?」
母よりは若干の年上であろう、綺麗にヒゲを整えた貴族の男は、ニヤリ薄笑みを浮かべ「連れていけ」と騎士に命令をした。
「はい」
私は二人の騎士に抑えられ、自宅へと強引に連れて行かれた。
玄関を一歩入り、飛び込んできた光景。
それは、目を疑いたくなるものだった。
「お母様!!」
リビングの床が血で染まっている。腹部を抑えた母がうずくまっていた。
その日はお世話になっている牧師様に教会で飾ってもらうお花を近くの花畑へ摘みに行こうとしていた。
母は胸を抑えながら、どことなく不安そうに忠告してきたのを覚えている。
「ええ。わかったわ。早めに帰るから」
私と母は二人暮らしの至って普通の平民だった。
父はいない、私が生まれる前に病気で亡くなったと母から聞かされていた。
裕福な暮らしではなかった。
学校も出ていない私は、働く場所もなく、街に出て市場を手伝ったり、知り合いから仕事をもらったり、その日暮らしをしていた。
母は身体が弱い。
ここ数年は頭痛や動悸に悩まされているみたいだったが、原因もわからず、ただ安静にしているしかなかった。
母のことは心配だけれど、調子の良い日はご飯を作ってくれたり、私にいろんな知識を教えてくれるから。
社会に出ても特に不自由することなく、なんとか働けていた。
早めに花を摘み、自宅へ帰ろうと急いでいた時だった。
なんだろう、あの集団。騎士さま?
鎧を纏った騎士が家の周りを取り囲んでいた。
どうして?私たちは何も悪いことなどしていないのに。
もしかしてお母様に何かあった?
息を切らしながら走っていくと「止まれ」とある騎士に声をかけられた。
「あの、私の家でなにかあったんですか?母は病気で家からあまり出られないんです!悪い人にでも……」
その場を通してほしいとすがりつく私に
「お前があの女の子どもか?」
声をかけてきた人物がいた。
だれ?私は知らない。
お母様の知り合い?
身なりを見ると、上流階級の貴族であることはわかる。
家紋は……。この辺りでは見たことがない気がするけれど。
「母を知っているんですか!?」
母よりは若干の年上であろう、綺麗にヒゲを整えた貴族の男は、ニヤリ薄笑みを浮かべ「連れていけ」と騎士に命令をした。
「はい」
私は二人の騎士に抑えられ、自宅へと強引に連れて行かれた。
玄関を一歩入り、飛び込んできた光景。
それは、目を疑いたくなるものだった。
「お母様!!」
リビングの床が血で染まっている。腹部を抑えた母がうずくまっていた。