囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される
 彼の部屋の前で深呼吸をし、ノックをする。

「アイリスです。夜遅くに申し訳ございません。どうしても会いたくて」
 私がドア越しに声をかけると
「アイリス。どうした?こんな時間に」
 彼は驚いていたが私を部屋に入れてくれた。

「あのっ」

 私が話そうとすると
「レディが屋敷の中とはいえ、こんな時間に一人で出歩くのは感心しない」
 腕組みをしながらソファに座った彼に行動を咎められた。

「申し訳ございません」

「しかし正直なところ、アイリスが俺の部屋へ訪問してくれることは嬉しい。だから今度からブローチへ願え。そうすれば迎えに行くから」

 あれ、怒っていない。いつもの彼だ。

「カートレット様に謝りたくてきたんです。エリスの件で私が発言したことを謝罪させてください。私は何もわかってはいませんでした」

 深く頭を下げた。

「いや。あんなことをして、アイリスに嫌われてしまったかと思った。お前が被害に遭ったんだ。きちんと意見を聞くべきだったな。すまない。今日は夜遅いから。部屋へ戻ってゆっくり休んでくれ」

 彼はそう言うと、私を部屋へ送っていくと立ち上がった。

 なんだか嫌われてしまった気がして、ツーと私の目から涙が零れた。

「嫌です。カートレット様、私のこと、嫌いになってしまいましたか?強情な自分勝手な女だって」

 はじめて恋というものをしたからだろう。
 自分の感情がよくわからない。
 心が繋がった相手と気持ちが離れてしまうのが怖い。

 フッと笑い
「そんなわけないだろう」
 彼はギュっと私を抱きしめてくれた。

「カートレット様。私はあなたからずっと離れません。だからあのようなことは言わないでください。これからは私があなたを支えていきたい。愛しています」

 自分の口から愛しているなんて言葉が出てくるなんて思わなかった。
 彼は強く私を抱きしめ返し
「ああ。ずっとそばにいてくれ。愛している。俺がお前を守るから」
 涙を拭いながら、優しく微笑んでくれた。

 その夜は忘れない。はじめて身体を重ねた。
 唇が腫れるんじゃないかと思うほど、キスを繰り返し、お互いを求めた。

「ん……っ、あぁ!」

 胸の膨らみの下をチュッと強く吸われ、声が漏れる。

「俺のものだという印だ」

「は……い。カートレット様のものです」

 私が悶えながら答えると
「レオン。名で呼んでほしい」

 これを意味することが私にはその時よくわからなかったが
「レオン。愛しています」
 彼の首に掴まり、自分からキスをした――。
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