愛憎路
第六話 境
参道から入口の長い階段まで辿り着いた。
何回も何回も脱出計画において通ってきたが上から見下ろすと、今回はとてつもなく深い海溝の様に感じられる。
「湊さん」
段差を下りながら、彼は問う。
「湊さんはまたいつか陽介君の事、好きになりそうですか」
それは多分、また明日会ったりでもすれば。
「好きになってると思います」
私もまた、彼に質問する。
「霧矢さんこそどうなんですか」
「それはもう、多分」
まあ、お互い無理だろうな。今は良くてもいつかはまた、思い出すんだろう。
「霧矢さん、大人なのに最後まで私に敬語でしたね」
「俺は初対面の人にはバリア貼るタイプですから」
「もう初対面じゃないでしょ」
「確かにな」
ハハッと彼は軽く笑っていた。
○○○
鳥居の前までついに来た。ここから踏み出せば、元に戻れるのか否か。洞窟からの移動を何回も繰り返し、土と泥だらけで鳥居前に屯している私達に手前を通る通行人は誰も目にくれない。こうなっていると完全に空間が切り離されているのだろう。
すいっと手を出すと、手に関しては問題無く通路へ通った。然し足を踏み出すのはちょっとだけ躊躇する。
「湊さん。君に関してはまだ機会はこれからもある、頑張りなよ。それがもし陽介君ならハッピーエンドだ」
人見知りバリアが外れたのか、霧矢さんは柔和な雰囲気になった。
「でもね。やっぱり私は関わらない方が陽介君は幸せなんだと、思っちゃうんです」
4年を代償に覚悟は決まった。足を踏み出す。
するりと通れた。私が道路に行った側からも彼の姿を見られた。
振り返ってお辞儀をする。何だか学校の先生と生徒みたいだ。霧矢さんは、軽く手を降っていた。
「ちょっと待った!!」
すると突如大声が響く。
「あれ栄子だ!ちょっと引き止めてくれないか?」
「え?え?」
彼の指差す先には深い帽子を被り、上品そうな買い物鞄を持ってこちらに歩いてくる女性がいた。
あれですか?と指で必死にジェスチャーを送る。
そう!と言わんばかりの大丸が返ってきた。
「あの!すいません!」
もう人と話すのが苦手とか、全部飛んでいた。
「ちょっとそこの神社の手前にいてもらえますか?」
「あの、何を?」
流石に女性は怪訝そうに私を見ている。然し私の勢いが凄かったのか、神社前には移動してくれた。
「じゃあ後は!」
と軽く霧矢さんに会釈する。外から彼の事が見えているかどうかは分からないが、もうやるしか無かった。
そうして学校とは反対方向に駆け出すと、私の体は光に包まれていた______
何回も何回も脱出計画において通ってきたが上から見下ろすと、今回はとてつもなく深い海溝の様に感じられる。
「湊さん」
段差を下りながら、彼は問う。
「湊さんはまたいつか陽介君の事、好きになりそうですか」
それは多分、また明日会ったりでもすれば。
「好きになってると思います」
私もまた、彼に質問する。
「霧矢さんこそどうなんですか」
「それはもう、多分」
まあ、お互い無理だろうな。今は良くてもいつかはまた、思い出すんだろう。
「霧矢さん、大人なのに最後まで私に敬語でしたね」
「俺は初対面の人にはバリア貼るタイプですから」
「もう初対面じゃないでしょ」
「確かにな」
ハハッと彼は軽く笑っていた。
○○○
鳥居の前までついに来た。ここから踏み出せば、元に戻れるのか否か。洞窟からの移動を何回も繰り返し、土と泥だらけで鳥居前に屯している私達に手前を通る通行人は誰も目にくれない。こうなっていると完全に空間が切り離されているのだろう。
すいっと手を出すと、手に関しては問題無く通路へ通った。然し足を踏み出すのはちょっとだけ躊躇する。
「湊さん。君に関してはまだ機会はこれからもある、頑張りなよ。それがもし陽介君ならハッピーエンドだ」
人見知りバリアが外れたのか、霧矢さんは柔和な雰囲気になった。
「でもね。やっぱり私は関わらない方が陽介君は幸せなんだと、思っちゃうんです」
4年を代償に覚悟は決まった。足を踏み出す。
するりと通れた。私が道路に行った側からも彼の姿を見られた。
振り返ってお辞儀をする。何だか学校の先生と生徒みたいだ。霧矢さんは、軽く手を降っていた。
「ちょっと待った!!」
すると突如大声が響く。
「あれ栄子だ!ちょっと引き止めてくれないか?」
「え?え?」
彼の指差す先には深い帽子を被り、上品そうな買い物鞄を持ってこちらに歩いてくる女性がいた。
あれですか?と指で必死にジェスチャーを送る。
そう!と言わんばかりの大丸が返ってきた。
「あの!すいません!」
もう人と話すのが苦手とか、全部飛んでいた。
「ちょっとそこの神社の手前にいてもらえますか?」
「あの、何を?」
流石に女性は怪訝そうに私を見ている。然し私の勢いが凄かったのか、神社前には移動してくれた。
「じゃあ後は!」
と軽く霧矢さんに会釈する。外から彼の事が見えているかどうかは分からないが、もうやるしか無かった。
そうして学校とは反対方向に駆け出すと、私の体は光に包まれていた______