クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 すると彼は力強く頷いてくれる。彼はそれから真霜のもとへ向かうと、彼女の背をもう一度撫でた。

「悪い、次の配達があるからもう行くな。大丈夫、由亜の憧れの不動店長だろう? 絶対なんとかしてくれる」

 する、真霜ははっと顔を上げ、目元を腕で拭う。

「ごめん、廉士くん。そうだよね、大丈夫だよね」

 彼女は自分を奮い立たせるようにそう言うと、その顔に無理やりな笑みを貼り付けた。

「引き止めてごめん。もう大丈夫、頑張るね」

 結木くんはそんな真霜を見て複雑そうに微笑む。だが、彼女の頭をぽんぽんと優しく撫でると、私に一礼して去っていった。

「真霜さん、スタッフたちに開店前の今日の指示。いける?」

 振り返りそう言うと、真霜は赤い目のまま「はい」と頷く。そんな彼女に頷き返し、ふたりでスタッフルームへ急いで戻った。

 真霜は出勤してきたスタッフたちに挨拶し、ばたばたと売場へ駆けてゆく。彼女の様子に安堵しながら、私は頭をひねり始めた。

 店頭展開する予定の商品が、予定数の十分の一しか納入されていない。どうしたらよいだろう。

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