クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 一番いいのは展開場所を変更することだが、モデル店舗として今さらレイアウトを変えるわけにはいかない。本部がこれでと承認した案なのだ。
 だが、スカスカの売場でお客様をお迎えするわけにもいかない。なんとか在庫を集めなければ。
 時刻は朝八時。近隣店舗の荷受けも、そろそろ終わった頃だろう。

(他店の在庫を見て譲ってもらえそうなものをリストアップしよう。電話で事情を説明したら、きっと譲ってもらえるはず)

 私は急いでパソコンに向き合った。まずは今朝のスタッフの動きを調べる。清掃と前日欠品分の品出しが組まれているだけだ。

(このくらいなら、落ち込んでる真霜でもきっと大丈夫。私はトドラー用パンツの在庫確保に努めよう)

 そう思い、さっそく他店の在庫確認に入る。
 真霜はすっかり気持ちを切り替えてくれたようだ。売場からは、スタッフたちに指示を出す彼女の声も聞こえた。


 オープンまであと四十分。私はスタッフルームで頭を抱えていた。在庫の確保がうまくいかないのだ。
 各店舗、自店の売上を計算して発注をかけている。だから、他店に譲る分など本来はないはずだ。それでも分けてくれると申し出てくれたのはありがたいが、それをかき集めても当初発注する予定だった数の半分にも満たない。

「店長、レジ開設お願いします」

 スタッフのその声で、私がここに座ってから一時間以上が経っていることに気づいた。

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