クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 完璧な売場を作りたかった。だけど、今さらそれは叶わない。明日午後に店舗に届く分の発注締切まではどうにか考えようと思ったが、そのタイムリミットも迫っているのだ。
 今から発注をかければ、明日の午後六時頃には残りの在庫が届く。数が調整されてしまうから希望通りの在庫数は届かないかもしれないけれど、それを店頭補充するのが最善だろう。

「明日の広告に、大々的にこの店舗が生まれ変わったと載る。顧客も、いつにもまして期待を持ってやってくると思う」

 そんなこと、言われなくとも分かっている。だから、こんなに悔しいのだ。
 ぐっと拳を握りしめる。爪が手のひらに食い込んで、痛い。
 私は震えそうな喉にぐっと力を入れ、声を出した。

「ごめんなさい、でももうどうすることも――」
「諦めている場合じゃない。上司()を頼れよ」

 智田SVの声にはっとする。顔を上げると、彼はポケットからスマホを取り出していた。
 それを操作しながら、彼は難しい顔をして言う。

「仙台の倉庫なら、在庫がある」 
「え……?」

 仙台には、プレブロ一大きな倉庫がある。あそこなら在庫があるのも納得だが、仙台からこちらまで送ってもらうには時間がかかるから現実的でない。
 そう言おうと思ったが、それより先に智田SVが口を開いた。

「片道六時間か。往復十二時間。高速を飛ばせば、閉店時間頃に戻って来られるな」

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