クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「あの、ありがとうございます! どうか、安全運転で」

 通路を奥へと去っていく彼を見ながら、ついそう声を上げる。頼もしい彼の背中を見届けながら、鼓動がひどく高鳴るのを感じる。つい、目頭が熱くなった。

(かっこよすぎだよ、私の〝推し〟)

 最初こそクールなのにドジをするかわいい一面に惹かれたが、彼はいつも私を助けてくれる。
 憧れの上司というだけでない。上司以上の気持ちを誤魔化しきれないほどに、私の体は反応してしまっている。

(……〝推し〟だって、決めたはずだったのに)

 目尻からこぼれ落ちそうな涙を人さし指で拭いながら、どうしようもない恋心を自覚してしまう。

 だが、今の私にはやるべきことがある。必要な在庫のリストアップだ。

(智田SVが動いてくれたんだもの。私も、しっかり動かないと)

 大丈夫、彼がいてくれる。きっと、どうにかなる。
 私はそんな安心感とともに、パソコン画面に向き直った。


 真霜はあの後気持ちを立て直したらしい。その後は売場で指示を出しながら、翌週分の発注処理をこなしていた。
 彼女の入力した数値をチェックしている間、真霜は私に話してくれた。

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