クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 なるほど、そういうことだったのか。智田SVも無事に到着したのだと分かり、ほっと胸を撫で下ろす。

「本当にありがとう、結木くん。このお礼は、いつか必ず」

 私は彼に向き合い、笑顔で頭を下げる。

 結木くんの真霜を想う気持ちは、こんなにも大きい。真霜の休みを調整して、ふたりでゆっくりできる連休を作ってあげよう。
 そんなことを思いながら頭を上げると、結木くんは照れたように首に右手を当てていた。

「いえ、そんな大したことしてないですから。由亜の邪魔になってもいけないし、俺はもう帰りますね」

 彼はそう言うと、くるりと踵を返す。その時、結木くんの肩越しに、段ボール二箱を台車に乗せた智田SVが見えた。

「智田SV!」

 慌てて彼のもとへ駆け寄る。

「不動店長、こちらの荷受けも頼む」

 彼はいつも通りの淡々とした口調でそう言った。
 十二時間、ほぼぶっ通しの運転をして往復し、これらを運んでくれた。疲れているだろうにもかかわらず、だ。

「よかった、本当に……。ありがとうございました」

 彼の姿を見たことで、胸に張り詰めていた緊張が一気に解けてしまう。思わず目頭が熱くなり、それをごまかすようにぎゅっと目を瞑った。
 小さくかぶりを振り、心を落ち着けてから目を開く。
 だが、目の前の彼の口角がいつもより和らいでいる気がして、それに胸がとくりと反応してしまった。

(今はときめいている場合じゃない!)

 自分に言い聞かせていると、彼が口を開いた。

「不動店長、ここからだ。売場、きちんと作り上げよう」
「はい」

 私は彼の言葉に強く頷き、荷受けを終わらせるとスタッフたちとともに伸縮パンツの陳列を始めた。

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