クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
「さすが真霜さん。いつも通りにやれば、ここまでできるんだもの」

 ついそうこぼすと、彼女はトルソーのちょっとした乱れを直しながら口を開いた。

「周りの皆のおかげです。ひとりだったら朝の落ち込みをずっと引きずってたんでしょうけど、智田SVや不動店長を見てたら『私も頑張らなきゃ』って思えました。それに、売場を作れたのもスタッフさんたちがキビキビ動いてくれたおかげです」

 そこまで言うと、彼女は照れ笑いのような顔を私に向ける。

「だから、やっぱり私にはまだまだ店長への道は遠いんだなって思いました。あ、店長になるのを諦めたわけじゃないですよ?」

 彼女は言葉の最後で、急に慌てたようにそう言う。そんな素直なかわいさに、胸がキュンとしてしまう。

「真霜さんは、絶対にいい店長になれる」

 確信を持ってそう言うと、真霜は私に抱きついてきた。

「て、店長〜!」

 よしよし、とその背を撫でると、彼女は私から離れて背を正す。

「さて、終わりましたね! ラーメン、食べに行きません?」
「いいね。いつものところ、行こうか」

 朗らかな笑みを私に向ける彼女にそう答え、私たちはスタッフルームへと荷物を取りに戻った。

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