クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 彼を止めたい一心だったのだが、発言してから恥ずかしくなった。なんとか顔に出さないようにして、慌てて言い訳をまとめて必死に紡いだ。

 それでも彼は昨夜のことを気にしているのか、『よろしく』という意味で差し出した私の手を握る力が、酷く弱々しい。
 それがなんだか寂しくて、私は気持ちを切り替えようと早々に手を降ろし、彼をテーブルへと案内した。

 今日の打ち合わせ内容は、店頭ではなく店舗奥のメンズ・レディースの展開の仕方についてだ。

「さっそくだが、通路幅について倉庫型店舗で実験した映像が届いた。見て欲しい」

 彼はそう言うと、鞄から取り出したノートパソコンの画面を私に向ける。どうやら、もう気持ちを切り替えているらしい。

(プライベートを引きずっていたら、仕事にならないものね)

 私はこの店の店長で、これからこの売場改変を成功させなくてはならない。私も頭を仕事に切り替え、智田SVの見せてくれるパソコン画面に目を向けた。

 何パターンか什器を組み換えた売場の様子を見せてもらう。

「新商品をひな壇展開するなら、やっぱり什器での展開は縮小するしかなさそうですね」

 映像を見るに、それが一番安全そうであるし商品も目立つ。
 だが、それでは店頭の在庫が減ってしまう。人気商品であれば、色・サイズの欠品は免れないだろう。そうなると在庫の問い合わせで人員が削られてしまうだろうし、補充も追いつかなくなるだろう。

 だからこそ什器を減らすのは避けたかったのだけれど、もうこうするしかないらしい。うーんと頭を悩ませていると、智田SVが口を開いた。

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