クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
 私の懸念事項を的確に把握し、アクションしてくれる。そんな彼の二歩も三歩も先をゆく行動に、この仕事をする相手が彼でよかったと心から思う。
 やはり、彼は尊敬できる憧れの上司だ。

「東京の大型路面店で大々的に実装予定なんだが、その前にこれを置いてくれる実験店舗を探していると本部で聞いたんだ。スタッフの負担が少し増えるかもしれないが、売場改変案の一環として、取り入れてみてはくれないだろうか」
「もちろんです。代替案、ありがとうございます」

 私はそう言うと、彼に頭を下げた。

(ときめくのは、上司としての彼にだけ)

 彼の行動にかっこよさを感じたのは、上司としての憧れだと自分に言い聞かせる。

 うっかり〝かわいい〟なんてもう二度と言わないようにと、彼への恋心は胸の奥に厳重にしまい込んだ。

 彼との打ち合わせを終え、ミーティングルームを出る。私が扉を開け彼を促すと、彼は一度足元を見てから通路へ出た。

「それでは、また」
「ああ。端末の件に関しては俺が中心になるから、そちらは気にせず売場改変案の準備を頼む」
「はい。次回までにメンズ・レディースの売場展開に併せた在庫数を計算して、発注かけられるよう準備しておきますね」

 そんな会話をしながら、スタッフルームの方へと向かう。
 だが、智田SVはスタッフルームへ入ろうとしない。どうやら、店舗は通らず従業員通路からそのまま外へ出るつもりらしい。

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