クールな上司の〝かわいい〟秘密 ――恋が苦手なふたりは互いの気持ちに気づけない
(ダメダメ、仕事に集中しよう。私は彼と、売場改変案を成功させなきゃいけないんだから)

 改めて意気込み、スタッフルームへと戻る。

「あ、店長ちょうど良かった。来週の入荷予定できたので、チェックお願いします」

 中へ入ると、パソコンに向き合っていた真霜がすぐにそう言って、こちらに笑みを向けてきた。

 真霜は店長を目指していることもあり、私は二週間ほど前から彼女に店舗の在庫管理を任せている。店長業務と並行して売場改変案を進めるにあたり、時間を捻出するために彼女にお願いしたのだ。

 真霜は地域社員として歴代の店長を見てきただけあって、のみ込みが早く規定の数値にプラスマイナスを入れる感覚も十分にある。といっても、私も確認するしアドバイスもするけれど。

(さて、仕事よ仕事!)

「今すぐに」

 気合を入れ、彼女のもとへ向かう。

「店長、傘どうしたんです?」
「あ……」

 真霜に言われて、気づいた。傘を持ったままだ。しかもいつの間にか、傘の柄をぎゅっと握りしめていた。
 慌てて手を解き、傘立てに戻す。そんな私の背に、真霜が話しかけてきた。

「店長、なにかあったんですか?」
「ん?」

 振り返ると、真霜は顔をしかめていた。

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