滾る恋情の檻

執着


それから、季節はあっという間に過ぎ、先輩も兄も、それぞれ志望校に合格し、卒業していった。


あのリビングでのキスは、まるで何事もなかったかのように、先輩の記憶の中では消えてしまったらしい。


家で会っても、結城先輩の中で私は、友達の妹。それ以上でも、それ以下でもなかった。


「結城先輩……」


思わず呟くと、胸の奥がざわつく。


忘れたいのに、忘れられない。


あの瞬間の感触、優しいけれどどこか熱を帯びていた唇の感触は、決して私の心から離れなかった。


美子は自分を奮い立たせるようにして、先輩のことを忘れようとした。


先輩が大学に入るまではすべて断っていた告白も、流れに身を任せて受け入れた。


 男の人と付き合っては、別れてを繰り返した。


キスも、その先も、経験した。


けれど……どんなに色んな人とキスをして、抱きしめられても、あの時の先輩とのキスほど胸の奥が高鳴ることは、なかった。


(……やっぱり、結城先輩とのキスには敵わない……)


そう自覚させられるたび、胸の奥が疼いた。
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