滾る恋情の檻
それでも、日常は続く。


授業に行き、課題に追われ、友達と笑う。


けれど、心の片隅はいつも先輩でいっぱいだった。


SNSは、美子の小さな楽しみであり、同時に拷問でもあった。


兄のフレンドやS大に通う人の投稿を通して、遥の大学生活をこっそり覗くのが日課になっていた。


フォローする勇気はまだなく、ただ、写っている写真を見つけると、思わずスマホを握りしめてしまう。


「……彼女らしき人は、いない……」


そう、安堵を繰り返して、


先輩の姿が少しでも写真に写っていたら、勝手に保存して何度も見返す。


(ストーカーみたい)


友達との笑顔、講義室での写真、学内イベントの集合写真――


ほんの一瞬でも先輩の存在を感じられると、胸がざわつき、


そして、自分の知らない先輩に、息が詰まりそうになる。


苦しくて、でも先輩の姿をみれると嬉しくて、
駄目だと理性では理解しているのに、どうしてもやめられなかった。


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