滾る恋情の檻
美子は必死に勉強もしていた。
遥と同じS大に行くため、毎日必死に参考書を開き、問題を解いた。
努力のすべてが、先輩に追いつくためではなく、先輩の存在を感じるための理由になっていた。
(……忘れられない……でも、忘れなきゃ……)
そう思うたびに、スマホに保存した先輩の写真を何度も見返してしまう自分に、少しの苛立ちを覚えた。
彼氏は何度も変わった――
けれど、誰と付き合っても、胸の奥で渦巻く先輩への感情は止められない。
好き、という言葉では足りない。執着に近い、強く、苦しい想い。
あのリビングでのキスが、美子の心に刻み込まれてから、時間が経っても色あせることはなかった。
まるで、檻の中に閉じ込められたように。抜け出すことは出来なかった。
これは、恋なのかわからない。
ただ先輩を求めるこの気持ちは、誰にも理解されない秘密のように、美子の中で膨らみ続けていった。