滾る恋情の檻

♢ ♢ ♢

 
荒い呼吸がようやく静まっていく中――互いの体温だけがすべてを埋め尽くしていた。

遥は美子の身体を、苦しいほどに、強く強く抱きしめる。
 
「美子ちゃん……」

「……ん。……は、い……」

「もう、これからは……俺の美子ちゃんだから。絶対、他の男に触れさせないでね」

「っ」


耳元に落ちたその言葉に、美子は涙を滲ませながら頷いた。
 
――ずっと、憧れて、手が届かないと想って、執着し続けた人。


その人からの、同じ熱量の執着に、美子は心も身体も満たされていた。

心臓の高鳴りは収まらないまま――でも、こんなにも強く自分を求めてくれる人がいる。

その事実だけで、もう、どうなっても後悔はないと思えた。
 
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