滾る恋情の檻
目が合う。


「……こ、こんにちは…。七瀬 美子です」


少しかしこまって差し出された声。
その瞬間、脳が揺さぶられるような衝撃が走った。
耳に届いた声色が、やわらかい空気が、仕草が――その全部が、胸の奥を鷲掴みにした。
息をするのを忘れるほど、ただその存在に心を奪われていた。


(……なんだ、これ)


初めて会ったはずなのに、ずっと探していた何かを見つけたような感覚。


その子の名を、存在を知った瞬間から、もう逃れられなかった。


「初めまして。結城 遥です。よろしくね、美子ちゃん」


自然を装って笑顔を向ける。けれど、内心は平静じゃなかった。


美子――七瀬美子。


心の中で名前を呟いた瞬間、確信した。
それは単なる一目惚れなんて言葉じゃ片付けられない。


一目見た瞬間に、“彼女が欲しい”と思った。
ただの好意じゃない。


この存在を、どうしても自分のものにしたいという欲望。


胸の奥で、強烈な衝動が生まれ、静かに、けれど確実に膨れ上がっていくのを感じていた。
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