滾る恋情の檻

 ◇
 一年と三年の校舎は離れているから、学校で先輩の姿を見かけることはほとんどなかった。


 だからこそ――ある日、偶然見かけた瞬間、胸が跳ねた。


(……先輩だ)


 廊下の向こうに立つその姿。


 けれど、隣には綺麗な女の人がいた。


 おしゃれで、大人っぽくて、先輩と並んでいて一目で「お似合いだ」と思えるような人。


 笑い合う二人を見た瞬間、胸の奥がチクリと痛んだ。


(あの人が……彼女、なのかな……)



 比べるまでもない。


 私なんかよりずっと大人で、ずっと魅力的で、先輩の隣にふさわしい。


 わかっている。届かないって。


 でも、どうしても嫉妬で心がざわついてしまう。


 それでも――視線を逸らすことができなかった。


 どれだけ切なくても、胸が苦しくても、ただ先輩を目で追い続けてしまう自分がいた。
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