滾る恋情の檻
秘密
玄関のドアが開く音がした。
「ただいまー」
乱暴で少し口の悪い兄が、いつもの声で入ってくる。その後ろには結城遥が続いた。
「お邪魔します」
今日も穏やかで、落ち着いた声。
その声が耳に入った瞬間、胸の奥が、思わず跳ねる。どうしても視線が先輩に向いてしまっていた。
その時。
「あっ!やべっ!!」
急に兄がスマホを見て慌てた声をあげた。
「バイト先に渡さなきゃいけねぇやつあんの、忘れてた。今連絡きたから、ちょっと持っていくわ」
「え、今から…?」
「わりぃ!すぐ戻るから。遥、先入ってくつろいでて」
荷物を抱え、兄は足早に出ていく。
両親も共働きで不在。
その瞬間、リビングに残されたのは私と、先輩だけだった。