やっぱり君が好きだ
 9月、中学校のイベントの一つ、体育祭がもうすぐ。
 学校全体が準備に取り掛かっていた。教室では旗のデザインや、リレーの順を決める声が飛び交い、昼休みも校庭で練習する生徒が目立つようになった。

「ねえ、私たちさ競技何する?」
 横から菜々の声が飛んできた。
「んー私なんでもいいよー菜々なんかやりたいことないの?」
「え、そんなこと言っちゃってー陽人君と一緒がいいんでしょ?だから綱引きやりたいんじゃないの?」
 ほら照れない照れない、ニヤけた顔でそう言ってきた。その通り、綱引きがしたかった。
「え、いいの?綱引きで?」
「いいに決まってるじゃんーじゃあ早く先生に言おっ!花凛は陽人君に綱引きよろしくって挨拶してきて!」
 そういい私の背中を押し出した。

「ねえねえ、陽人君。」
 綱引きをする男子メンバーで話していた陽人君の肩をそっと叩いた。
「ん、どうしたの?」
「あのさ、私と奈々も綱引きやることなったからよろしくね。役立たずだと思うけど。」
 陽人君は笑顔で返してくれた。
「そんなこと全然ないよ!こちらこそよろしく。」
 笑顔でそう返してくれた。なんだか胸がほっこりした。

 体育祭当日
「いよいよ次、私たちの綱引きじゃん!」
「ねっ、楽しみ!」
 そんな緊張した雰囲気の中、奈々と2人で話していた。

「次は、綱引きです。綱引きをする生徒の皆さんは中心に集まって下さい。」
 放送が入り、私たちは綱の周りに集まった。そして私の前には...陽人君が来た。
「今から頑張ろうね。」
「うん、花凛も!」
 そういい陽人君は前を向いた。この少しでも話す時間が何よりも良かった。
「スタート!」先生の声と笛が鳴り、綱引きが始まった。
 周りの応援の声が耳に届く中、私たちのチームはどんどん引き寄せられていった。お互いに支え合いながら、必死で綱を引き続ける。
「もう少しがんばろ。」
 息を切らしながら陽人君は言う。
「うん。」
 そういい、私は手を少し前の位置に移動すると、陽人君の手に当たった。
「あっ。」
 私はすぐに手を離した。
 陽人君はニコッと笑い、また前を向いた。恥ずかしい。でも嬉しい。
 そして、最後の一押し。みんなでせーの、と言い力を合わせた瞬間、ついに綱がラインを越えて、私たちの勝利が決まった。
「やったー!」
 そういい私たちはハイタッチした。今日2回も陽人君の手に触れてしまうなんて。
「来年もまた同じ学校行けたら一緒に綱引きしようね!」
 つい言ってしまった。
「うん、やろ!」
 そう優しく答えてくれた。なんて優しいんだろう。この温かい気持ちが胸に体育祭が終わるまで残っていた。
*                      *
 久しぶりに病院に行った。最近は行くのが嫌で通院の回数を少し減らしてもらっていた。
 いつも通り検査を終え、主治医の髙見先生との診察を待っていた。
 順番が呼ばれ診察室に入ると、いつもとは違う空気が漂っていた。
「今日はご両親いないのかな?」
「はい、今日は仕事で。」
「そうか。」
 髙見先生はいつも通り穏やかだった。だかいつもと少し違うようなそんな気がした。少し待っていると髙見先生が口を開いた。
「陽人君、実は今回の結果があまり良くなくてね。」
「はい。」
 嫌な予感がした。正直聞きたくなんてなかった。でも自分の運命だから受け止めなければいけないのだ。
「もう高校に上がる頃には──」
 あぁ、そっか、そっか。頭の中が真っ白になった。
「母にはまた伝えておいて下さい。」
 なぜか口が勝手に動いていた。それと同時に涙も流れていた。嗚咽を出して。先生は僕の肩をゆっくりとさすっくれていた。
 昨日、花凛と約束したことははもう...遠い夢の向こうのおとぎ話、なのかな
< 6 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop