初恋相手に再会したら、恋の続きになりまして
マスターがチョコレートケーキをテーブルに置いた。
「これ……」
理世は思わず声を上げる。

「うん、頼んでみた」
滉星が微笑む。

二人でこのカフェに来るときは、いつも、何か特別な日。
このチョコレートケーキを一緒に食べていた。
マスターも、高校生の二人を見て、「特別だからね」と笑って出してくれた。
その優しさも含めて、忘れられない味だった。

フォークを手に取り、ひと口。
濃厚な甘さが舌の上に広がる。
途端に、十年前の記憶が鮮やかに甦った。
受験の直前、不安でいっぱいだった夜、滉星が「大丈夫、理世はできる」と笑ってくれたこと。
誕生日に「おめでとう」と照れながら分け合ったこと。
甘さと一緒に、胸がぎゅっと切なく締めつけられる。

「……味、変わってない」
理世は小さく笑う。

「俺も、同じこと思った」
滉星もフォークを口に運び、目を細める。

変わったはずの自分たちが、あの頃の延長線上にまだ立っている。

理世は胸の奥でそっと呟く。
(……もし、あのとき別れなかったら。私たちは、今も一緒にいたのかな)
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