初恋相手に再会したら、恋の続きになりまして
「……懐かしい」
滉星が低く呟いた。
その声に、高校時代の彼の面影が重なる。

そして、続けて言った。
「実は俺、来月であの会社、辞めるんだ」

「……そうなんだね」
理世の心がざわついた。彼の未来に、自分の知らない道が開けている。

「どうするの? 次」
少し怖くて、でも聞かずにはいられなかった。

「うん、次も決まってる」
そう言って見せた表情は、昔のように真っ直ぐで迷いがない。

「……もしかして、結婚するの?」
思わず言葉が出ていた。自分でも、なぜそんなことを聞いたのか分からない。

滉星は、くすっと笑って首を振った。
「いいや。相手もいないし」

安堵と、説明できない胸のざわめきが同時に押し寄せる。

「ここは離れることにしたんだ。だから……最後に理世と会えてよかった」

その一言に、胸の奥がぎゅっと痛んだ。
最後、という言葉がやけに重たく響く。

理世はカップに手を添え、温もりにすがるようにして目を伏せた。
「……そう言われると、なんだか寂しいね」

「俺も」
滉星の声は、昔と同じく静かで優しかった。

だけどその距離感は、もう高校生ではなく大人のそれで、どこか触れられなかった。
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