初恋相手に再会したら、恋の続きになりまして
理世はメモ帳を開き、取材用の質問を整理する。
でも、滉星の姿を見ると、自然と手が止まってしまう。
カフェの柔らかい光に照らされた彼の顔は、大人になった余裕と、昔の初恋の面影が混ざり合っていた。

「……あの頃、カフェに行くの、好きだったよな」
滉星がふと呟く。

理世は微笑みながら、フォークでケーキを少し切る。
「うん、特別な日には、ケーキを食べてた」

「そうそう、俺、あの時……ちょっと恥ずかしかったけど、理世と手をつなぐの、すごく嬉しかったんだ」
笑いながらも真剣な眼差し。

理世の頬が熱くなる。

(やっぱり、あの頃も今も変わらないんだ……)

「じゃあ、今日の取材の話に戻ろうか」
滉星は、少しプロフェッショナルな顔に戻る。
理世も気を取り直して質問を続ける。
仕事の話をしているうちに、自然と二人の距離は近くなる。

「このカフェのデザイン、どういうコンセプトで?」
理世が質問すると、滉星は資料を指しながら説明してくれる。
建築家としての情熱、理想、こだわり。
その真剣な姿に、理世は思わず息をのむ。

「……そういえば、昔も理世はよく質問してたな」
滉星が笑う。
「私、好奇心旺盛だったから」
理世も笑顔で返す。

取材は進むけれど、笑い声や昔話のやり取りが混ざり合い、まるで時間がゆっくりと戻るようだった。
大人になった二人が、仕事を通して互いを見つめ合う――

「……次は、ここでイベントもやりたいんだ」
滉星が楽しそうに話す。

理世はそれを聞きながら、ふと心の中で呟く。
(二人で関わる機会が増えたらいいな……)

ケーキの甘さと、仕事のやりがい、そして少しのときめきを理世は感じていた。
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